青春は探花を志す 金椛国春秋⑤(篠原悠希)の感想/ブログ

今回は、青春は探花を志す 金椛国春秋(篠原悠希)の概要と感想をご紹介します。




本の概要
| タイトル | 青春は探花を志す 金椛国春秋 |
| 著者 | 篠原悠希 |
| 発売日 | 2018年09月22日 |
あらすじと物語の紹介
想いを寄せるあの子のために、目指せ難関試験突破!大人気中華ファンタジー
金椛(きんか)国首都。
一族殉死の運命から辛くも逃れ、平穏な日常を取り戻した星遊圭(せい・ゆうけい)。
名門、星家の再興を望むものの、心中は複雑。
父兄のように完了を目指すか、好きな医学の道を志すか……。
そんな中、ほのかに思いを寄せる明々(めいめい)から報せが。
故郷の村で営む薬屋が嫌がらせを受けているらしい。
相手は国士太学に通う豪族のドラ息子。
明々を守るため、遊圭は国士太学へ進み官僚登用試験を受ける決意をする。
傑作中華ファンタジー、青春編!
『青春は探花を志す』は、金椛国で生き抜く少年を描く中華風ファンタジー『金椛国春秋』シリーズの第5巻。
読書記録
- 読了日:2025年10月28日(火)
感想
ついに遊圭に平和な日々がやってきた!笑
第一巻から常に命の危機に見舞われ、綱渡り状態を継続していた遊圭。
第5巻にしてようやく平和と呼べる日々がやってきました。
ただまあ純粋に両手を挙げて”良かった良かった、めでたしめでたし”…というわけにはいかないようで。
皇帝の外戚という立場がもたらす責任と重圧。家の再興のために必要なこと。お世話になった人や関わった人たちとの柵の数々。
こういったものが遊圭の周りに何重にも何重にもまとわりついて、心の底では想いを寄せているはずの明々の下へも自由に出かけることが出来ず、なかなか窮屈そうです。これはこれで辛いだろうな…。
そんな遊圭は将来の道に迷っていたものの、明々の薬屋に嫌がらせされたことをきっかけに、国士太学に進み官僚登用試験を受ける道に進むことを決意。
無事国士太学の入学試験を突破し、日々学校に通う中で初めて友人と呼べる存在ができ、学問に打ち込もうとするものの、ことはやはりそう単純には進まず。
挙げ句玄月の思惑にも乗せられ、官僚界隈にも強い力をもつ劉一門の不正を暴くために動くことに。
超難関の試験を突破したものが平等に官僚を目指せる…、という聞こえの良い制度の中では蔓延る不正。
その尻尾を掴むため、せっかく得た友人を裏切るような真似をしつつも、目的のために冷徹に戦略的に振る舞う遊圭。
最終的に”不正を暴く”という目的は果たせたものの、その行動が原因で友人を苦しめ、挙げ句友人を取り返しのつかない行動に出させてしまう…という非常に切ない展開になります。
外野から見ていたら、取り返しのつかない行動に出た尤仁に対して「お前え!」と思わなくは無いですが、因果関係をたどると結局は遊圭が原因となるわけで、本人はもうたまらないだろうな…と胸に来るものがありました。
玄月のお目溢しがあり無事尤仁を逃がすことが出来たとは言え、あれほど頭のよく逸材として注目された尤仁がたった一度の勘気によって一生を棒に振ったことも切ないですし、その家族や故郷のことを考えるとやりきれない気持ちになります。
その上遊圭側にも手抜かりがあり、最終的には官位を剥奪の上流刑となることに。踏んだり蹴ったりとはこのこと。
ただ、ある意味遊圭は官位を剥奪されたことで様々な柵から逃れ、身軽になったわけで。
流刑地に赴く際も、明々の村に立ち寄りプロポーズをかましています。やるなあ。←
ラストシーンのルーシャンたちの会話は色々と不穏ですが、身軽になった遊圭が今後どういった道を描いていくのか、引き続き楽しみです。
印象に残ったポイント
実学の価値について
前回の第四巻でも、「天文学は日蝕の予言が必要だったり、高度な計算能力が求められることから相当優秀な人しか務められない、なのに官位が低く重要視されていない」という描写がありましたが、引き続き第5巻でも同じことが指摘されていました。
それも、天文学だけではなく、人の病を癒し命を救うある意味一番必要なはずの医学の地位が低い、ということも触れられています。
これ、今の現代の世の中でも同様だなあ、と思います。
学者や医者は、非常に高度な専門知識を扱って、人々にとって一番有用なことをしている人たち、のはず。
ですがその実そういった人たちが、金銭的に、あるいは社会的な名誉といった意味で恵まれた状態にあるか?というと決してそういうわけでもないなと思います。
もちろんトップの一握りの方々でそういう意味での”成功”を手にしている人はいるとは思いますが、全体的に見るとかなり微妙な状態。
というかこの手の道のトップの人よりも、全然IT系のトップ等のほうがよっぽど稼いでいる気がします。
なんというか、こういう道に進むと決めた人が、社会的・金銭的成功と紐づかないことに違和感があるなとずっとうっすら思っています。
思っているだけでどうすることも出来ない身ではありますが、こういう物語がきっかけとなり、いつかこのあたりがうまく整理されて、然るべき形になれば良いのかなと思います。






