幻宮は漠野に誘う 金椛国春秋④(篠原悠希)の感想/ブログ

今回は、幻宮は漠野に誘う 金椛国春秋(篠原悠希)の概要と感想をご紹介します。



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本の概要
| タイトル | 幻宮は漠野に誘う 金椛国春秋 |
| 著者 | 篠原悠希 |
| 発売日 | 2018年04月25日 |
あらすじと物語の紹介
お家断絶、女装で後宮勤務。ようやく抜け出せた筈の遊圭だが!?新章開始!
星遊圭は、先帝崩御の際、「外戚族滅法」によって殉死させられた名門一族の生き残り。
女装で後宮を生き延びた彼は、知恵と機転で法を廃止させ、
晴れて男子として生きることに。
……のはずが、政略結婚のため遠国へ輿入れする公主・麗華の近侍女官として、
ともに旅立つこととなる。
しかし異国の宮廷に潜入した彼の真の任務は、
金椛帝室を救うため、失われた日蝕の周期表「天官書」を探すことで……!?
傑作中華ファンタジー、新章!
『幻宮は漠野に誘う』は、金椛国で生き抜く少年を描く中華風ファンタジー『金椛国春秋』シリーズの第四巻。
読書記録
- 読了日:2025年10月24日(金)
- 新章突入!でも馴染みのメンバーは引き続き登場してくれるので嬉しいです。
感想
外戚族滅法を廃止し、無事本名を堂々と名乗って生きていけるようになった遊圭。
…のハズが、のっけから女装させられて麗華公主と旅をし、挙げ句命の危機にさらされる事態に。
遊圭、苦労が尽きないのね…。
後宮に潜んでいた時点で2年ほど世間から置いていかれているのに、そこに最低1年はかかるレベルの過酷な任務。
しかも失敗すれば王朝が危ない、というレベルのギリギリの綱渡り。
災難だな…とは思いつつ、確かに陽元や玄月の言う通り遊圭が適任なのは言うまでもなく、まあなるべくしてなったのか…。
後宮時代は自らの命をかけて秘密を守り抜く必要があり、かつ先行きも不透明だったことから少し暗い描写も多く合ったように思いますが、一方今回の夏沙王国編は確かにシビアで綱渡り的な部分は多けれど、仲間と呼べる強力なメンバーが多いので読んでいて純粋にワクワクと楽しめた感があったのが印象的。
遊圭自身の成長や、遊圭と玄月の関係の良い方への変化、何より第二巻からずっと見てきた麗華公主が堂々と王妃らしく過ごしている姿を見ることが出来たのも良かった。
麗華公主、このまま幸せになってほしいな…。
そんな夏沙王国での日々は突如終わりを告げ、玄月・遊圭はそれぞれ別のタイミングで決死の帰還を図ることに。
その途上の熾烈さもさることながら、紅糀党との血なまぐさい争いの激しさには驚かされます。
何度も命の危機には見舞われている遊圭ですが、自らの下した判断で直接相手の生命を奪う、というのはここが初めてのこと。それも何万人も。
物語が始まったときには、まさか最後の方でここまで遊圭が体を張って直接戦闘に繰り出さなくてはならない事態になるとはこちらも予期しておらず、残り数十ページでの展開にはぐいぐい引き込まれましたね。
なんとか紅糀党を退け、目下の危機は去ったように見える金糀帝国。
ラストシーンは遊圭が成人の儀式を陽元自らの手で行うところで、物語は幕を下ろします。
後宮から出た後も激しい日々を過ごした遊圭。
ひとまず無事に成人したものの、このまま平穏無事に官僚を目指す…というのんびりした展開にはならないだろうな…という不穏な期待があります。笑
この先も楽しみですね!
印象に残ったポイント
天文学に命をかけた楊老人
物語の中盤で、遊圭は前王朝から天文学の書物をすべて持ち去ったとされる楊老人と出会います。
言うなればこの老人のせいで遊圭も玄月も遠く夏沙王国まで来る羽目になったわけですが、その熱量は並々ならぬ物があり。
前王朝が倒れた後、紅糀党に力を貸すも、そこに秘められた思いは「自らの日蝕の予言が正しいことを確かめたい」というもの。
星の研究を続け、ただその想いを成し遂げるためだけに生きる。
なんというか、こういう事ができるいわいる一般の物差しからしたら”変な人”だけが天才と呼ばれ、世界を変えていくのだろうな、と感じるものがあります。
作中の金糀国でもそうですが、そういった”変な人”は巷では評価されることはほとんどありません。
死後功績が認められて教科書に載った…という偉人がゴロゴロいる時点で歴史が証明しています。
なんとも歯がゆいことではありますが、とはいえ現代においてはSNSやインターネットの発達で少しは情勢が変わってきているようにも感じます。
長年コツコツと趣味として続けていたものが、実は世の中にとっては有用でそこから芽が出て注目されたり。
”普通”に生きていたら集団に馴染めないような人が、動画の中で生き生きとすることで成功したり。
良くも悪くもSNSやインターネットのおかげで、日の当たる場所が少しだけ広がったのかもしれません。
願わくば、これがなにかの状況を変えるきっかけになったら良いなあ、と思います。



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