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月下氷人 金椛国春秋外伝(篠原悠希)の感想/ブログ

月下氷人 金椛国春秋外伝(篠原悠希)の感想/ブログ

こんにちは、ゆーです。

今回は、月下氷人 金椛国春秋外伝(篠原悠希)の概要と感想をご紹介します。

 

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本の概要

タイトル月下氷人 金椛国春秋外伝
著者篠原 悠希
発売日22021年09月18日

 

 

あらすじと物語の紹介

遊圭たちのその後と、本編前夜の玄月たちの物語を描く、珠玉の外伝短編集!

幾多の困難を乗り越え、最愛の人・明々(めいめい)と結ばれた遊圭(ゆうけい)。
だがその胸には、いまだ氷解しないある大きな遺恨があった。
そのことを告白できないまま、束の間の平穏を送っていたある日、明々に嬉しい“兆し”が見られて――?

本編完結後の遊圭たちの姿を描く後日譚、そして本編前夜の玄月、陽元、凜々たちの人生と、後宮での出逢いが明かされる過去編を収めた全4編。
あの人気キャラクターたちの、知られざる物語がついに明かされる!
シリーズファン必読。登場人物たちの心中深くに迫る、珠玉の外伝集。

 

「月下氷人 金椛国春秋外伝」は金椛国春秋シリーズの外伝短編集。

シリーズとしては11作品目に当たります。

読書記録

  • 読了日:2025年11月16日(日)

 

感想

 まさにこういう話が読みたかった…!

 

本編完結後の遊圭と明々の日々を描く後日譚「時の妙薬」「魚水の契り」。

登場人物の一人であった凜々に焦点を当てた、過去の回想と後日譚である表題作「月下氷人」。

そして、本編スタート前の陽元と玄月の姿を描いた前日譚「無憂樹」。

 

それぞれの短編で遊圭の、明々の、凜々の、陽元の、玄月の、本編では語り尽くされていなかった細かい心情まで詳しく描かれ、より深く物語を味わえました。

 

本ブログでも何度かちらっと触れていましたが、金椛国春秋シリーズは、シリーズを通じて描くものが多いからか、あるいは経る時代が長いからか、若干展開が早く各登場人物の背景や心情がそこまで深く描かれていないな、と感じる箇所が往々にしてありました。

この外伝はそんな本編のそういった側面を、見事に補完してきましたね…!

 

”外伝”という言い方こそしていますが、その実この物語を含めて、金椛国春秋シリーズなのだと思います。

改めて、このシリーズに出会えて良かったな、と思える物語でした。

 

印象に残ったポイント

今回は短編なので、それぞれの物語について触れていきます。

 

月下氷人

遊圭・明々、陽元・玄月は比較的物語の中心にいたのである程度深くは描かれていましたが、ここに来て凜々に焦点が当たるとは。

玄月に忠実な、懐刀。どうやら昔玄月に恩を受けたことがきっかけで忠実な部下となった…、ということまでは描かれていましたが、その心情は今まで一度も触れられていなかったのではないでしょうか。

 

玄月と関わり、お互いに力を貸し合い、築かれた二人の関係。

恋人や愛情とも違うけれど、この二人の間にしか流れないような温かさがある、そんな関係。

 

何より、凜々本人が、無理をするでも背伸びするでもなく、今の玄月との関係に満たされていることがよく分かって、とても良いな、と思わされました。

この物語を知ったうえで、本編の凜々の言動をもう一度振り返ってみたくなりました。

 

 

時の妙薬・魚水の契り

様々な出来事があって遅れたものの、遊圭と明々の二人が着実にあたたかい家庭を築いていく様子が見られて良かった。

 

遊圭の中でわだかまりとして残っていた陶連のことについても、まさに短編のタイトルの通り「時の妙薬」によって飲み下せるところまで至ったわけで、いずれにせよ”生きる”ということは尊い、と改めて思います。

お互いが生きているからこそ訪れる瞬間がある。どんな柵も、複雑に絡み合ったものも、時が解決してくれる事がある。

一時の感情に流されること無く、このことは心にずっと留めておきたいと思いました。

 

そして作品のラストに描かれた「魚水の契り」。

短い数ページの短編ながら、たくさんの幸せが詰まっていてとっても良かった…!

 

橘さんと尤仁とは、今ではこんなふうな付き合いをする友人となったのか…、と、二人との出会いから知る身としては感無量ですね。

色々状況が変われど、背中を預けることができる友人がいる、というのはやっぱり良いなあ、と改めて思います。

 

 

無憂樹

陽元と玄月。この二人がいかにして出会い、親睦を深め、今のような関係になったのか。

”事実”として描かれることは多かれど、それぞれの心情を基に仔細に描かれたのは、今回が初めてです。

 

まず陽元。想像以上に嫡母・永氏の影響を受けていたのに驚きました。

確かにシリーズ1~3巻での弾劾に至るまでに、「傀儡として育てられた~」という描写がありましたが、シリーズ1~3では確かに若干幼く勇み足が過ぎるところは見えつつも、”傀儡”というほどダメダメな印象はなかったんですよね。

若干このあたりズレがあるな~とはうっすら思っていたのですが、なるほど幼少期は本当にダメダメだったんだな、陽元…。

 

もっとも、それは陽元本人が悪いわけではなく、完全に永氏の教育の賜物()な訳であることも描かれていて、改めて恐ろしい人だったんだな…と思い起こされます。

人は教育と躾によって大きく変わるのだな、と身が引き締まる思いにもなります。←

 

そんな陽元を変えたのは、恭王、そして玄月親子との出会いでした。

この3人と出会って、徐々に世界を広げ、知見を深め、見方を変えていく陽元の姿は、見ていて非常に清々しいです。

人生において”誰と出会うか”が重要、とはよく聞く話ですが、まさにこういうことか、と思わされましたね。

 

そして玄月。遊圭と出会った頃にはもう”出来上がった人間”という感じで、その内面も含めて隙のない人間、といった様相でしたが、そのルーツと経緯がここで明かされます。

何より、後宮で陽元が玄月を見つけ出し、自らの”秘密の品”を見せた時に描かれた玄月の内面が、とても良かった。

 

鼻の奥がきゅっと熱く湿ってくる。孤独な環境で少年の心を失わずまっすぐに生きている陽元のそばで、陶紹も子どもの時をやり直せるかもしれない。こみ上げる涙で視界がぼやける。床に座り込んだ陶紹の膝に、ハラハラと透明な滴が散った。

 

そうか、ここにあったのか、玄月が陽元に心を寄せるルーツは。

玄月にとって陽元は、自らの命の恩人であることや、国を背負う帝であることよりもずっと、唯一無二の「自分がやり直せるかもしれない子どもの時」をくれた存在なのだ、と初めて理解しました。

 

本編シリーズでは何度か玄月の裏切りに結びつけるようなミスリードがありましたが、そんなことはない。

このエピソードを知っていれば、決して玄月は陽元を裏切ることはない、というのがよく分かります。

 

すべての本編シリーズを描ききったあとで、この物語を出してくるのは完全に確信犯ですね。笑

 

 

外伝はもう一冊刊行されています。こちらも合わせて楽しみたいと思います。

ただもう一冊の外伝だけ手元にないので、しばらく間は空いてしまうと思いますが…(早く欲しい)

 

総合評価

4.5

本編シリーズよりも丁寧に描かれた心情がとても良く、個人的には本編シリーズよりも高評価。

まあもちろん、本編シリーズがあってこその作品なんですけどね。

本編シリーズだけで終わること無く、この外伝も必ずチェックしてみてほしいです。

 

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