麦本三歩の好きなもの 第二集(住野 よる)の感想/ブログ

今回は、麦本三歩の好きなもの 第二集(住野 よる)の概要と感想をご紹介します。
本の概要
タイトル | 麦本三歩の好きなもの 第二集 |
著者 | 住野よる |
発売日 | 2023.01.13(文庫版) |
シリーズ | 麦本三歩の好きなもの |
あらすじと物語の紹介
新しい年になって、図書館勤めの麦本三歩にも色んな出会いが訪れた。真面目な後輩、謎めいたお隣さん、三歩に興味がなくもなさそうな合コン相手。そして、怖がりつつも慕ってきたひとりの先輩には「ある変化」が──!?マイペースな彼女の、あいかわらずだけどちょっとだけ新しい日々。気軽に読めてほんわか気分になれるシリーズ最新刊。
図書館勤務の20代女子、麦本三歩の日常を描く物語のシリーズ第二巻。
第一集と同様細かく章で区切られており、基本的には一話完結の短編として楽しむことができます。
読書記録
- 読了日:2025年10月10日(金)
- やはり続き物だと一気に呼んでしまう癖がありそう。早かった。
感想
第一集の良さをそのままに、毎日続いていく麦本三歩の日常を描く本作品。
前作の時からは三歩の周りもやんわりと変化があって、例えば職場の図書館では後輩ができたり、三歩に春が訪れかけたり、職場で恐れながらも慕う怖い先輩の身辺に変化があったり…。
そんな周囲の変化、環境の変化にもめげず(?)、三歩はあくまで三歩のままで。
だんだん”麦本三歩”という人物について掴めてきた読み手のこちらとしては、ここまで来ると三歩が三歩らしくあることにホッとするやら、微笑ましいやら。一体どの目線なんだか、とは思いつつそんな感じで読み進めていきました。
さて、そんな中で後半の展開。
三歩に突如として訪れた”別れ”の物語には、読んでいるこちらも寂しさを感じるものがありました。
こういう日常系だとありがちなのですが、物語の最初の方は読んでいるこちらは主人公にしか意識が行っていないんですよね。
でも当然主人公の周りには周囲の人間、というのがいるもので。
読み進めていくうちに、それこそシリーズものだったら二冊目の後半くらいに差し掛かるくらいで、その”周囲の人間”にもだんだん愛着が湧くものなんです。
今回の別れは、そんなふうに愛着が湧き始めたところだったから、驚いた。
驚いたし、寂しかった。
そんな”別れ”に対して三歩がとった行動、その心中も相変わらず分かりやすく描写されているのがやはりこの物語の良さだなあ、と思うところでした。
麦本三歩の好きなものシリーズは、単行本ならすでに第三集が発売されているようです。
といいつつ私は圧倒的文庫本派なので(本好きとしてはかなり雑な態度だなと我ながら思うのですが)文庫化されるのをのんびりと待とうと思います。
(単行本寝る前に読んでいて、過去に事故った事があるのがトラウマです。笑)
印象に残ったポイント
麦本三歩は辻村深月が好き
三歩が”ツイートをしよう”と思い立ち、その勇気を得るために空港を訪れ、いざツイートを完了した後の文章。
やってみればなんでもないこと、なんでこんなことを怖がっていたんだと思うことが世界には溢れている。
それを出来た。
なんだか大層なシーンに見えますが、あくまでこれは三歩が”ツイートすることが出来た”というだけのシーン。
ただまあ言われてみればそのとおりで。
たった”ツイートをする”というだけで立ち止まっていた三歩ですが、普段私が怖気づいてやらないでいることも、せいぜい他の人から見たら”ツイートをする”程度の軽いことなのかもなあ、と思うのです。
大なり小なりそういうことってたくさんあって。
実際にやってみればなんでもなくって、あれ以外と私できるじゃん?となって、世界が広がる。
物語の中で三歩もそれで広く広がる自分の可能性に思いを馳せて心がすうっと広がっている様子でしたが、確かにこういう世界が広がっていく感覚ってとっても良いんですよね。
”なんでもいいからやってみよう”と世界ではよく言われていますが、要はそれを噛み砕いたらこういうことだな、と納得できるワンシーンでした。
ちなみに私が最近体感した「やってみればなんでもないこと」は、スーパーマリオギャラクシーのボス戦ステージですね!笑
なんだかおどろおどろしい雰囲気があって、「こんなの私にはクリアできないかもしれない…」と無駄に怖気づいて後回しにしていたのですが、どうしてもそこをクリアしなくては先に進めずやってみたところ、案外あっさりクリア出来た…という感じ。
自分で書いていてしょうもないな…と思わなくは無いですが(笑)、あの瞬間感じた、とてつもない達成感と「ああ、私の世界も思ったより広かったな」と感じたあの無駄に大きな万能感。
こういう気持ちは大事にしたいところです。笑
麦本三歩は楽しい方が好き
三歩が二日酔いで苦しみ、苦しみ抜いた末のシーン。
これからも三歩は失敗して後悔して反省してを繰り返すだろう。実際に何度も失敗している。
でもいつかは成長する、かもしれない。
その、かもしれない未来に期待しつつ、三歩は三歩なりに頑張ろうとしている。
これ大事ですよね。
失敗しない人間なんていない、とはよく言ったものですが、大事なのは失敗しないことよりも、失敗した後のこと。
失敗して、後悔して、反省して。
そしていつかは成長する…はず、と信じて頑張ることが、きっとシンプルに良いんだろうなと思っています。
それをこうやって明確に三歩の言葉で書かれて、なんだかホッとしたような心地になりました。
とは言えこのシーン、これまた大層なことを言っていますが、その実”二日酔いの苦しみを二度と繰り返してなるものか”という部分。
わかる、分かります。二日酔いはあまりにも苦しく、かつその原因が100%自分にあるわけなので、なんだか大層な反省と決意を繰り返す時間になるんですよね。
だからまあそこまで深刻に受け止めてやる必要もないのかもしれません。笑
そして、何故か、二日酔いは絶対に繰り返す。
私は比較的お酒に強い方なので、物語の三歩ほどベッドの上でのたうち回ることには滅多にならないんですが、まあ滅多にならないだけで年に一回くらいはやらかします。←
あの現象は本当に何なんでしょうね…。なぜ人はお酒と出会ってしまったのか。なぜお酒と羽目を外す、というのがセットでやってきてしまうのか…。
三歩の言葉が印象に残ったのと同時に、その三歩の姿にいたく、非常に共感する、印象に残る章でした。