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麦本三歩の好きなもの 第一集(住野 よる)の感想/ブログ

麦本三歩の好きなもの 第一集(住野 よる)の感想/ブログ

麦本三歩の好きなもの 第一集(住野 よる)の概要と感想をご紹介します。

 

本の概要

タイトル麦本三歩の好きなもの 第一集
著者住野よる
発売日2021.01.14
シリーズ麦本三歩の好きなもの

 

 

あらすじと物語の紹介

住野よるが贈る大人気「麦本三歩」シリーズ第一弾!

待望の文庫化

好きなものがたくさんあるから、毎日はきっと楽しいー

図書館勤務の20代女子・麦本三歩のなんでもないけど

幸せな日々を描いた心温まる日常小説。

 

図書館勤務の20代女子、麦本三歩の日常を描く物語。

細かく章で区切られており、基本的には一話完結の短編として楽しむことができます。

 

読書記録

  • 読了日:2025年10月7日(火)
  • 一話完結感のある短編なので、隙間隙間で読み進めた形

 

感想

主人公の三歩(珍しい名前!と本文中で本人も触れている)は好きなものがたくさんあって、特に美味しいご飯が大好きで、職場ではしょっちゅう怒られ、抜けていることも多く、些細な失敗をしがちな女性。

そんな三歩には共感できるところと、「流石にそれはよくわからん」と思うレベルで共感できないところがあって、でもだからこそキャラクターとしてくっきり浮かび上がってくるのが良いな、と思います。

 

そしてこの物語は、三歩の心情が事細かに、それはもう細かく綴られているのも特徴の一つ。

「麦本三歩はモントレーが好き」という章では、三歩が諸々の逡巡の果てに仕事をサボり、その後仕事をサボった罪悪感に苛まれる…という物語が描かれますが、この仕事をサボるまでの思考の過程とか、そこから罪悪感に苛まれるまでのステップがものすごく細かく綴られていて、わかりやすい。

この章は特に共感しましたね…

 

多分どんな方の中にも、この物語に登場する三歩みたいな部分があって、たっぷり共感できるポイントがあるんじゃないかなと思います。

 

わかるわかる!ととてつもなく共感できる部分もあれば、「三歩さんそれはいくらなんでも三歩すぎる!」と感じる部分もある、この物語。

 

キャラクターとしての三歩を楽しむ事もできるし、そんな三歩に共感して「ああ言われてみれば私もこんなふうに考えているな」と考えつつ自身の来し方を振り返る事もできる。

なにか重大な事件が起こるような物語はもちろん面白いし楽しいけれど、こういう日常系の物語からしか得られないものってあるよなあ…と改めて思わされる、ほっこり心が満たされるような物語でした。

 

「麦本三歩の好きなもの」はシリーズ化されており、第二集もすでに手元にあるので、続きを読むのが楽しみです~!

 

印象に残ったポイント

麦本三歩はモントレーが好き

三歩が罪悪感を抱えて、挙げ句同じ事情を唯一共有している”おかしな先輩(と三歩が呼んでいる)”に相談を持ちかけたときの、おかしな先輩のセリフ。

 

「ずるいことしたり、人に嘘をついたり、でも生きていかなくちゃいけなくて、自分をそんな嫌なやつだと思いたくなくて、だから他人をたっぷり甘やかして、そのかわり甘やかしてもらって、必ずちょっとだけ反省して、行きていくしか無いんだと思うよ。

少なくとも私はそれを自覚して行きていけたら良いなと思ってるし、自覚して行きている人が好き」

 

日々ただ日常を過ごしているだけでもずるいことをして生きていかなくちゃいけない、ということを物語の中の人もちゃんと知っていたということ。

そしてそんな自分を嫌なやつだと思いたくないと思っているということ。

普段からふわっと思っているもやっとしたような感情が見事に言い当てられたような気がします。

 

そしてそこに対する解決策が、”他人をたっぷり甘やかして、そのかわり甘やかしてもらって、必ずちょっとだけ反省”することだと示してくれました。

こうやって言い表されなくても、普段そういえば無意識にこういうことってやっているなあ…、と気がつくとともに、こうやって行きていけば良いんだな、とホッとさせられるセリフでもありました。

 

麦本三歩は今日が好き

物語の最終章。三歩の何気ない朝の様子を綴る物語の中での文章。

 

楽しみなことがあると考えれば、出勤もチーズ蒸しパンから続いていくバトンタッチなのかもしれない。

好きなものがたくさんあるから、布団だけと添い遂げるなんてもったいないから今日も職場に行くことにする。

 

仕事に行くのってぶっちゃけ億劫ですよね。

そう言っている私は在宅勤務がメインなので厳密には”行く”という行為は行っていないわけですが、それでも会社のPCを立ち上げる前は「ああ嫌だなあ、めんどくさいなあ、いっそベッドから出たくない、このまま夜まで寝ていたい」と毎日思っています。←

 

ただ、三歩に言われてみれば、これから起こることを色々数えてみると、意外と楽しみなことって結構あるんですよね。

 

三歩じゃないですが、まずベッドから起き上がれば朝ごはんを食べられます。日によりパンだったりご飯だったりまちまちですが、今日は何を食べようかなと考えるのも楽しいもの。

仕事は、まあ全般的に好きでも嫌いでも無いですが、ある程度スムーズに進めば良いな。

お昼には何を作ろうか。冷蔵庫の残を想像しながら、今日は何の口かな?と考えるのも楽しいです。

お昼ご飯のときにいつもつけているテレビ番組。今日はなにの特集かな。

今日の午後は会議が少ないから、好きな曲を聞きながら作業をしよう。最近聞いていない曲を聞くのも良いかもしれない。

仕事が終わったらゆっくり湯船に浸かって、今度は夜ご飯に思いを馳せて。

夜ご飯を食べた後はのんびりゲームをしてもいいし、読んでいる本の続きを楽しむのも良い。あ、冷凍庫にアイスが残っていた気がするからあれも食べちゃおうかな。

 

なるほど、1日ベッドと添い遂げてしまうとこれだけの楽しみを逃してしまうわけで。確かにこれはもったいない。

これを”好きなことのバトンタッチ”として表現するこの物語が大好きだなあ、と思います。

 

私も大概食べることばっかりな気がしますが、なんでもない、なにもないと思っていた毎日もこうしてみれば色々あるもので。

好きなことから好きなことにバトンタッチしながら、ああ楽しかった!と思える毎日を過ごしたいなと明るく思えました。

 

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